スマートフォンの普及とともに、通信費の節約を望む人々の間で格安SIMが注目されています。しかし、その利点にもかかわらず、なぜ格安SIMの普及が思ったより進まないのでしょうか。本記事では、格安SIMが広まらない理由について詳しく解説していきます。

 

まず、格安SIMの料金プランがシンプルで分かりやすい一方で、初心者にはややこしい話が多いことが普及の妨げとなっています。端末とSIMカードの相性やSIMロック、さらには自分で初期設定を行わなければならない点が、多くの人にとってハードルが高く感じられるでしょう。また、購入できる端末の種類が限られていることも、格安SIMを選択する上での悩みの種です。特に最新機種や人気の端末が欲しい場合、大手キャリアと比べて選択肢が狭まることが多く、この点が普及の足かせとなっているのです。

 

本記事をお読みいただくことで、格安SIMの普及に影響を与えている様々な要因について理解を深めることができます。そして、格安SIMを検討している方々が、自分に合った選択をする上での参考になることでしょう。

格安SIMのデメリット

現在使っている携帯の契約期間内だから

格安SIMの普及が進まない理由は様々ですが、その中でも大きな要因となっているのは、2年縛りがある現在の携帯契約による呪縛です。違約金を払ってでも乗り換えた方が結局安くなるというケースもあるにもかかわらず、違約金を払うことに抵抗感があるため、多くの人が格安SIMに変えられないのです。

 

また、格安SIMに関しては、料金プランや仕組みが難解であることも理由の一つです。大手キャリアなら実店舗で相談できますが、格安SIMの会社には実店舗がほとんどなく、インターネットでの申し込みが一般的です。そのため、分からないことがあっても十分に質問できないことが多く、不安に感じる人が多いのです。

 

通信速度も気になるポイントで、格安SIMは大手キャリアの30Mbpsに比べて5Mbps程度と遅くなることが多いです。理論上は動画視聴に問題はないとされていますが、遅い通信速度を不安視する人が少なくありません。

 

格安SIMの提供会社が多く、どれを選べばいいか迷う人も多いです。20社以上の提供会社が存在し、au・ソフトバンク・ドコモといった3択に慣れている人にとっては、比較検討が難しいと感じることがあります。

 

また、故障時などのサポートが心配されることも、格安SIMの普及を妨げる要因となっています。大手キャリアでは手厚いサポートが受けられますが、格安SIMは基本的に自己責任になることが多く、困った時に頼れるサポートがないと感じる人がいます。

 

乗り換えが面倒と感じることも、格安SIMに変えられない理由のひとつです。種類が多すぎて選ぶのが難しく、さらに乗り換えるために必要な手続きも面倒と感じる人が多いのです。

 

キャリアメールが使えなくなることも、格安SIMへの乗り換えを躊躇させる要因です。特に親世代はLINEを使っていないことが多く、キャリアメールを使って連絡を取るため、格安SIMに変更すると困るケースが多いのです。

 

さらに、格安SIMに対して「なんとなく怪しい」というイメージを持つ人もいます。安い価格で提供されるサービスに対し、不信感を抱いてしまうことがあります。

 

最後に、クレジットカード決済が主な支払い方法であるため、カードを持っていない人には不便であると感じられることが格安SIM普及の障害となっています。

 

通信速度が遅くなりやすい

格安SIMの普及が進まない理由のひとつは、通信速度が遅くなりやすいことです。これは、格安SIMが大手キャリアから回線を借りて提供されており、利用状況によっては通信速度が大手キャリアと比べて劣ることがあるためです。特に昼休みなど利用者が多い時間帯には通信速度が低下し、動画視聴が困難になることもあります。

 

また、通信速度の制限も格安SIM普及を阻む要因です。格安SIMプランでは通信量が選べるものが多いものの、契約した通信量を超えると速度制限がかかることが一般的です。通信速度の遅さは、インターネット利用においてストレスを感じる原因となります。そのため、自分がどれくらいの通信量を使うかを把握し、適切なプランを選ぶことが重要です。

 

さらに、格安SIMでは通信が不安定でつながりにくい時間帯が多いことも普及の障害となっています。大手キャリアの回線を借りる形で運営されているため、通信エリアは同じでもつながりにくい時間帯が増えてしまいます。そのため、格安SIMを利用する際は、通信状況を考慮して利用することが求められます。Wi-Fi接続を活用することで、通信が安定する場合もあります。

 

以上の理由から、格安SIMの普及が進まない現状が続いています。通信速度や安定性の面で大手キャリアに劣ることが、多くのユーザーにとってデメリットと捉えられていることが要因となっているのです。

 

毎月の料金支払いはクレジットカード決済のみ

格安SIMの普及が進まない理由の一つに、料金支払い方法がクレジットカード決済が主であることが挙げられます。これは、クレジットカードを持っていない学生や現金主義の方にとっては、格安SIMを利用できないという問題が生じるためです。一部の格安SIM事業者はデビットカードや口座振替に対応していますが、それでも対応している事業者の数は限られています。

 

そのため、格安SIMを検討する際には、クレジットカードの取得が無難だと言えます。また、成人年齢の引き下げにより、18歳からでもクレジットカードが作れるようになったこともありますが、それより若い年齢層や現金主義の方は依然として契約が難しい状況が続いています。

 

また、大手キャリアでは口座振替が選べることが一般的ですが、格安SIMでは口座振替が選べない場合が多く、支払方法が「クレジットカードのみ」となるサービスも存在します。これが、格安SIMの普及を阻む要因となっているのです。口座振替を希望する場合やデビットカードで支払いたい場合は、事前にサービス内容を確認し、対応している事業者を選ぶことが重要です。

 

キャリアが提供するサービスが使えない

格安SIMの普及が進まない理由として、キャリアが提供するサービスが利用できない点が挙げられます。大手キャリアが提供している「dポイント」や「au WALLETポイント」などのポイントサービスは、格安SIMに乗り換えると失効することがあります。ただし、手続きによってはポイントの失効を防ぐこともできるため、乗り換え前にポイントを使い切ることが推奨されます。

 

また、格安SIMを利用すると、大手キャリアの独自サービスが使えなくなることも普及を妨げる要因です。例えば、docomo契約者に提供されるフリーWi-Fiが、格安SIMへの切り替えによって利用できなくなるケースがあります。そのため、キャリア独自のサービスにお得感を感じているユーザーにとっては、格安SIMへの乗り換えが心理的ハードルとなります。

 

一方で、格安SIMにも独自の恩恵があることを踏まえ、乗り換えを検討することが重要です。キャリア独自のサービスにあまり魅力を感じていないユーザーは、格安SIMへの乗り換えがより容易になるでしょう。格安SIMの普及を阻む理由を理解した上で、自分にとって最適な選択を行うことが大切です。

 

キャリアメールが有料オプションになる

格安SIMの普及が進まない理由の一つに、キャリアが提供するメールサービスが有料オプションになることが挙げられます。キャリアメールは、現在大手キャリアで提供されている「〜@docomo.ne.jp」、「〜@ezweb.ne.jp」、「〜@softbank.ne.jp」といったメールアドレスで、格安SIMに乗り換えると利用できなくなることが多いです。そのため、乗り換えを検討している方は、Gmailなどのフリーメールや格安SIMが提供する独自のメールサービスを利用することがおすすめです。

 

また、キャリアメールを利用しない場合には、キャリアメール宛のメール送信に注意が必要です。キャリアメールには迷惑メールのブロック機能が設定されており、キャリアメール以外の送り先から届くメールがブロックされることがあります。この問題を解決するためには、迷惑メールのブロックを解除してもらうか、メールアドレスを除外設定してもらう必要があります。

 

さらに、キャリアメールが必要なサービスも存在するため、キャリア回線を解約する前に確認しておくことが重要です。これらの点を考慮して、格安SIMへの乗り換えを検討することが求められます。キャリアメールの利用に関して、格安SIMが提供するサービスと自分のニーズを慎重に比較検討することで、適切な選択ができるでしょう。

 

LINEでID検索ができなくなる

格安SIMの普及が進まない理由として、LINEのID検索機能が利用できない点が挙げられます。格安SIMを利用しても、LINEのトークや無料通話は通常どおり利用できますが、ID検索機能を使って友だちを探すことができません。これは、キャリアの年齢認証が格安SIMでは行えない仕様になっているためです。

 

しかし、友だち登録には他の方法もあります。例えば、「ふるふる」や「QRコードリーダー」を利用して、近くにいる相手と友だち登録ができます。また、遠くにいる相手と友だち登録したい場合は、自分専用のURLを発行して登録してもらう方法があります。

 

格安SIMによっては、LINEの年齢認証ができず、ID検索が利用できないことが明記されている場合もあります。しかし、乗り換え前に大手キャリアで年齢認証を済ませておくことで、格安SIMに変更してもID検索機能を利用することができます。

 

このように、格安SIMではLINEのID検索ができないことがあるため、友達追加はQRコードなどを送り合う範囲内にとどめておくことが望ましいです。格安SIMへの乗り換えを検討する際は、この点を考慮し、自分のニーズに合ったサービスを選択することが大切です。

 

テザリングが使えない場合がある

格安SIMの普及が進まない理由のひとつに、一部の機種でテザリングが利用できないことが挙げられます。テザリングとは、スマートフォンをポケット型Wi-Fiに見立てて、他のデバイスにインターネット接続を提供する機能です。外出先でのインターネット接続に便利なこの機能が、端末によっては利用できない場合があるのです。

 

例えば、ドコモのAndroid端末であれば、2015年の秋冬モデル以降は格安SIMを使用してもテザリングが可能ですが、それ以前の古い端末では制限があり、APN設定が強制的にドコモ純正のSPモードに切り替わってしまいます。また、auのAndroid端末ではテザリングができますが、iPhoneの場合はiOS12以降のiPhone 7 / 7 Plus以降のシリーズでなければ対応できません。

 

格安SIMにおいては、特定の端末しか使用できないことが説明されており、さらにテザリングが利用できる端末を選ぶとなると、選択肢がかなり限られてしまいます。このため、契約を検討する際は、事前にテザリングが使える端末がどれなのかを調べておくことが重要です。外出の機会が多い方は、格安SIMを選ぶ際にテザリング機能を考慮することが望ましいでしょう。

 

回線と端末の相性など初心者にはややこしい

格安SIMの普及を阻む要因の一つに、初心者にとってややこしい回線と端末の相性や、自分で初期設定を行う必要がある点が挙げられます。キャリアと比べて格安SIMは料金プランがシンプルで分かりやすいものの、SIMカードと端末の相性やSIMロックについて理解していないと、どのプランを選ぶべきか分からなくなることがあります。

 

格安SIMを利用する際には、「APN設定」と呼ばれる初期設定を自分で行う必要があります。この設定がされていないと通信ができず、スマホに詳しくない人にとっては難しそうに感じられることがあります。しかし、APN設定は実際にはそれほど難しくなく、格安SIMの公式サイトや契約時に受け取る書類に手順が記載されているため、手順に沿って行えば問題なく設定できます。

 

また、格安SIMでは通常のスマホと比べて初期設定が多くて面倒に感じることがあります。特に、元々使っていた端末をそのまま利用する場合、端末と格安SIMの互換性を確認し、対応していない場合は新たに端末を購入する必要があります。さらに、端末を工場出荷時の状態に初期化し、データのバックアップを取ってから格安SIMを挿入し、APNを変更する必要があります。通常のスマホ契約ではこういった設定をせずに利用できるため、格安SIMの初期設定は一部の人にとっては不便に感じられるかもしれません。

 

購入できる端末が少ない傾向にある

格安SIMの普及を妨げる理由の一つに、購入できるスマホ端末の種類が少ないことが挙げられます。格安SIMを提供するサービスでは、スマホ端末も販売していることが多いのですが、大手キャリアに比べて取り扱い端末が限られていることが一般的です。例えば、最新機種のiPhone12は一部の格安SIMで取り扱いがあるものの、他のサービスでは取り扱いがないこともあります。さらに、楽天モバイルのようにiPhone自体の取り扱いがない場合もあります。

 

この問題に対処する方法として、大手キャリアから端末のみを購入し、他社の格安SIMを使ってお好みのスマホを利用することが可能です。ただし、この方法では端末を別途用意する必要があります。格安SIMでは選べる端末の種類が少ないため、欲しい端末がある場合は自分で用意しなければならず、手間がかかることがデメリットとなります。そのため、格安SIMを検討する際には、端末の種類に強いこだわりがない方が契約しやすいと言えるでしょう。これらの理由から、購入できる端末が少ない傾向にあることが、格安SIMの普及に影響を与えていると考えられます。

まとめ

本記事では、格安SIMが思うように普及しない理由について検討してきました。その中で、初心者にとって複雑な相性や初期設定の問題、さらに購入できる端末の種類が限られていることが、格安SIMの普及を阻む要因として挙げられました。これらの課題を克服することで、格安SIMがより一層広まる可能性があると言えるでしょう。

 

また、格安SIMに関心がある人々が自分に適したプランや端末を選ぶために、本記事で述べられたポイントを考慮することが重要です。それぞれの要素を総合的に把握し、自分のニーズに合ったサービスを選ぶことで、格安SIMの魅力を十分に活用することができるでしょう。

 

最後に、格安SIMの普及を促すためには、業界全体が取り組むべき課題も存在します。初心者にもわかりやすい情報提供や、端末選択の幅を広げることが求められています。今後、格安SIMがより広く受け入れられるよう、各種の問題解決が期待されます。